こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
薬剤師の視点から、
- お酒と高血圧薬の関係
- 飲みすぎると起こるリスク
- 薬とお酒の上手な付き合い方
などを、やさしく解説しているので、普段お酒を飲む方も、これから飲む予定がある方も安心して読める内容になってます。

アルコールは高血圧と薬に影響する
アルコールの摂取は高血圧を悪化させるだけでなく、薬の効果にも影響を及ぼす可能性があります。
なぜなら、薬の吸収や代謝にも影響を与え、効果を弱めたり副作用を強めたりするからです。
適量のお酒はストレスを解消したり、血行を促進したりするなど健康に良い影響を与えるともいわれています。
しかし、たとえ適量の飲酒であっても、薬の効果にアルコールが影響することがあるため注意が必要です。

アルコールとお薬の関係性を知っておくことが大切です。
アルコールは薬の効果を変える
アルコールと処方薬の組み合わせによる影響を把握することはとても重要です。
アルコールは薬の効果に影響します。特に以下のようなリスクがあります。
- 薬の効果の変化:
アルコールは一部の薬剤と反応し、効果を強化または弱化させる。 - 副作用の増加:
眠気やめまいなど、薬の副作用がアルコールによって強まる可能性がある。 - 肝臓への負担:
薬とアルコールは肝臓で代謝されるため、同時摂取は肝臓に負担がかかる。 - 治療効果の低下:
アルコールが薬の吸収や代謝に影響し、治療効果が低下することがある。 - 血圧への影響:
特に高血圧治療薬との組み合わせでは、アルコールは血圧変動のリスクを高める。
このように、処方薬とアルコールの組み合わせは思わぬ健康リスクを招くことがあります。



服薬中の飲酒には十分な注意と医師・薬剤師への相談が欠かせません。
主な高血圧薬ごとの注意点
アルコールを摂取することで薬の副作用が出る場合があります。
薬による治療は病気や症状の管理に役立ちますが、個人の体質や他の服用薬、アルコールなどの影響で副作用のリスクが高まることもあります。
以下、具体的な高血圧薬の副作用についてまとめました。
主な薬剤名 | 代表的な副作用 |
Ca拮抗薬: アムロジピン、ニフェジピン、ベニジピン など | 顔のほてり、むくみ、頭痛、歯肉の腫れ、動悸、便秘、など |
ARB: テルミサルタン、ディオバン、カンデサルタン、ロサルタン、オルメサルタン など | 軽い動悸、めまい |
ACE阻害剤: エナラプリル、リシノプリル、イミダプリル、ペリンドプリル など | 空咳、のどの違和感、むくみ、など |
利尿薬: フロセミド、スピロノラクトン、トリクロロメチアジド など | 脱水、低カリウム血症、など |
β遮断薬: アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、プロプラノロール など | 脈がおそくなる(徐脈)、手足の冷え、喘息発作、など |
ご自身が服用している薬の副作用の可能性についても理解し、自分の体調の変化に注意を払うことが大切です。
飲酒と服薬タイミングの適切な間隔
アルコールを飲む際は前後2時間を空けるとよいとされています。
なぜなら、薬の吸収が終わってから、または飲酒の影響がある程度抜けてから薬を服用することで、薬の働きにアルコールが影響しないようにするためです。
しかし、食後から時間が空いてしまうと服用を忘れてしまうことがあります。
飲み忘れてしまうと血圧が上がりっぱなしになった状態のため危険です。
そのため、必ず医師にアルコールを飲む習慣があることを必ず報告して、服用するタイミングを聞きましょう。
高血圧治療における薬とアルコール量の関係
アルコールと血圧には、思っている以上に深い関係があります。
「これくらいなら問題ないでしょ」
「お酒でストレスが減るなら、体にもいいよね」
そう思って飲んでいる人も多いかもしれません。



実はお酒が血圧に与える影響は大きく、軽く考えるのはちょっと危険ですよ。
飲酒量に応じて高まる血圧上昇リスク
一般的にアルコールの量が増え、飲酒が習慣化されるほど血圧は上昇する傾向にあります。
これは、アルコールによって血管に負担がかかり、血管の健康が損なわれるためです。
特に、動脈硬化のリスクが高まる点が問題です。
動脈硬化とは、血管の壁が硬く、厚くなる状態を指し、血管の柔軟性が失われてしまいます。
その結果、血管が破れたり、詰まりやすくなり、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気を引き起こす可能性が高まります。



日常的な飲酒は血圧を上げるだけではなく、様々な病気を引き起こす可能性があります。
多量飲酒による代表的な健康リスク
アルコールを日常的に摂取したり、飲みすぎてしまうと他の病気にもかかってしまいます。
なぜなら、アルコールが体内の複数の臓器・機能に直接的かつ長期的なダメージを与えるからです。
例えば、
- 脂肪肝や肝硬変をきたす
- すい臓に炎症(膵炎)を生じる
- 糖尿病を発症しやすくする
- 糖尿病の人では低血糖を起こしやすくなる
- 中性脂肪が上がる
- 尿酸が上がる
など、僕が実際に関わった患者さんには、高血圧以外にも他の病気にかかっている方はたくさんいました。
お酒の種類別・適量の目安
日本高血圧学会が発行している「高血圧治療ガイドライン」ではお酒の種類別摂取量の目安を定めています。
お酒の種類別摂取量の目安 | |
種類 | 目安 |
ビール | 中瓶1本(500ml) |
日本酒 | 1合(180ml) |
ワイン | グラス2杯(200ml) |
ウイスキー | シングル1杯(60ml) |
ただし、これらの数値はあくまでも一般的な目安にすぎません。
体質や体調、年齢によって、適切な飲酒量は人それぞれ異なります。
特に高血圧の方は、たとえ少量の飲酒でも血圧が上昇することがあるため注意が必要です。
高血圧薬とアルコールの管理法
実際にアルコール摂取量を減らすと血圧が下がると多くの研究で明らかになっています。
これはアルコールが血管や臓器、薬の効果に影響しているからです。
実際に、健康診断で高血圧を指摘された患者さまが薬局に来られた時に、
毎日の晩酌のとき、ビールを3本から1本に減らしたら血圧が正常値まで落ち着いたことがありました。
でも、ただ「減らしましょう」と言っても、気持ちの面でハードルが高いこともありますよね。
そんなとき、僕が提案したのは



いつものビール3本をやめるんじゃなくて、その代わりに“ちょっといいビール”を1本だけ楽しむのはどうですか?
と提案したら、1本に減らすことに成功しました。
「減らす」ではなく、「選ぶ」「楽しむ」へと視点を変えることで、患者さんも前向きに取り組めたようです。
節酒が薬の効果にもたらすメリット
お酒を控えることで血圧が下がる以外にも、薬を安全に服用できる確率がグッと高まります。
なぜなら、先ほど説明したようにアルコールが薬の効き方や副作用に影響することがあるからです。



節酒することで、薬が本来の効果を発揮しやすくなり、副作用のリスクも抑えられます。
たとえば、降圧薬(カルシウム拮抗薬など)を服用している人がアルコールを多く摂取すると、
薬とアルコールの相乗効果で急激に血圧が下がってしまい、立ちくらみやふらつきを起こすことがあります。
また、利尿薬を飲んでいる場合は、アルコールの利尿作用と重なって脱水になりやすく、体内のナトリウムやカリウムのバランスが崩れるリスクも考えられます。
薬の効果を引き出すためのアルコール習慣の見直し方
飲酒習慣を見直すことは重要です。
具体的な飲酒行動パターンを把握することで飲酒量が客観的にわかります。
具体的には
- 1週間のうち何日飲んでいるか
- 1回の飲酒で飲む量(ビール500ml×2本など)
これらを把握することが大切です。
また、「休肝日」をつくって肝臓を休ませるだけでなく、薬が効きやすい体に整えることも重要ですよ。



はじめは難しいかもしれませんが、徐々に飲酒の量を減らすことをおすすめします。
薬の効果をサポートする生活習慣と飲酒との関係
高血圧の治療では「薬をきちんと飲むこと」だけでなく、生活習慣の整え方や飲酒との付き合い方も、薬の効き方に大きく関わってきます。
例えば、
- 規則正しい生活で薬のリズムを整える
- 適度な運動や減塩を心がける
薬だけに頼るのではなく、生活習慣全体を見直すことで、治療の質はグッと高まります。
まとめ:高血圧と薬、アルコールの正しい付き合い方
今回の記事では高血圧、アルコール、薬の観点から説明しました。
ポイントをまとめると、以下のようになります。
- アルコールの過剰摂取は高血圧を悪化させる原因になる
- 高血圧の薬とアルコールは、併用すると効果や副作用に影響を与えることがある
- “少しだけ”と思っても、薬の種類や体質によっては注意が必要
- どうしても飲みたい場合は、飲酒の量・タイミングを医師や薬剤師に相談することが大切
お酒とうまく付き合いながら、無理のない生活習慣改善を続けていくことが、高血圧のコントロールにつながります。