隠れ糖尿病ってなに?
血糖値スパイクってなに?
糖尿病って放置するとどうなるの?
血糖値スパイクを防ぐ予防法は?
健康診断では「正常」と言われたのに、なぜか食後に眠気や疲労感を感じることはありませんか?
それは「かくれ糖尿病」や「血糖値スパイク」のサインかもしれません。
記事の前半では隠れ糖尿病、血糖値スパイクについて、記事後半では具体的な予防策まで詳しく解説します!

隠れ糖尿病について
「隠れ糖尿病」とは、普通の健康診断では見つからないタイプの糖尿病です。
空腹時の血糖値は正常なのに、食事をした後だけ血糖値が異常に高くなってしまいます。

健康診断は朝食を抜いて受けることが多いため、この状態が見逃されやすいのです!
- どんな人がなりやすいのか
- どうやって見つけるのか
- 放っておくとどうなるのか
それぞれ詳しくお話しします。
隠れ糖尿病になりやすい人の特徴
家隠れ糖尿病は誰にでも起こりうる病気ですが、特に以下の特徴に当てはまる方は注意が必要です。
遺伝・家族歴に関する要因
- 家族に糖尿病の方がいる
糖尿病には遺伝的な要因があり、インスリンの分泌や働き方に特徴があるため - 痩せ型でも遺伝的要因がある
体型に関係なく発症することがあるため油断は禁物
体型・年齢
- 40歳以上で太り気味(特にお腹周りに脂肪がついている)
内臓脂肪からインスリンの働きを邪魔する物質が分泌されるため
生活習慣に関する要因
- 早食いをする習慣がある
- 食事の時間が不規則
- 運動不足が続いている
- ストレスが多い生活を送っている
健康診断での指摘
- 「血糖値がやや高め」と言われたことがある
- 「境界型糖尿病」と診断されたことがある
- HbA1cが5.6%以上
これらの項目に複数当てはまる方は、すでに隠れ糖尿病になっている可能性があります。心当たりのある方は、一度詳しい検査を受けることをおすすめします。
隠れ糖尿病は食後血糖測定で見つかる
隠れ糖尿病を見つけるには、食後の血糖値を測ることが大切です。
特に有効なのが「75g経口ブドウ糖負荷試験」という検査方法です。
これは、75gのブドウ糖が溶けた液体を飲み、その2時間後に血糖値を測定します。
糖尿病の診断は、複数の血糖値指標を総合的に判断して行われます。
具体的には、空腹時血糖値が126mg/dl以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値が200mg/dl以上、または随時血糖値が200mg/dl以上のうち、いずれか一つでも該当し、さらにHbA1cが6.5%以上である場合に糖尿病と診断されます。これらの基準に当てはまった場合は、3~6ヶ月以内に再度検査を受けて最終的な診断が確定されます。
病院での検査が難しい場合は、薬局で血糖値測定器を購入して自宅で測ることもできます。
食後2〜3時間の間に測定すれば、ある程度の目安がわかります。
また、健康診断の結果でHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という項目が5.6%以上の場合は、食後高血糖の可能性が高いサインです。
※この数値は過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を表すもので、普段の血糖コントロールの状態がわかります。
気になる症状や数値がある方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
隠れ糖尿病に潜むリスク
隠れ糖尿病は「まだ軽いから大丈夫」と思われがちですが、実は深刻な病気につながる危険性があります。
血管が傷ついて動脈硬化が進みます。
その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが健康な人の2〜3倍も高くなってしまうのです。
しかも、症状がないため、知らないうちに血管へのダメージが蓄積されていきます。
さらに最近の研究では、がんや認知症のリスクも高くなることがわかってきました。
一番怖いのは、健康診断で「異常なし」と言われることで安心してしまい、生活習慣を見直すきっかけを逃してしまうことです。
隠れ糖尿病の段階で気づいて対策を始めれば、本格的な糖尿病への進行を防げる可能性があります。



普段の生活では、早食いをする人、食事の時間が不規則な人、運動不足の人も要注意ですよ!
血糖値スパイクとは?
血糖値スパイクとは、食事後に血糖値が急激に上昇してから急降下する現象のことです。
隠れ糖尿病【状態】:空腹時血糖値は正常だが、食後血糖値が異常に高い状態のこと
血糖値スパイク【現象】:食事後に血糖値が急激に上昇してから急降下する現象のこと
健康診断では空腹時の血糖値を測るため見つかりにくく、症状も軽微なため多くの方が気づかないまま過ごしています。
どのような症状が現れるのか、体内でどんなメカニズムで起こるのかを分かりやすく解説します。
血糖値スパイクで起こりやすい症状
食後の強い眠気が最も代表的な症状として挙げられます。
通常の食後の眠気とは異なり、意識がもうろうとするほど強い眠気を感じることがあります。
血糖値が急激に変動することで、頭痛やだるさ、異常な空腹感といった不快な症状も現れやすくなります。



また、気分が不安定になったり、冷や汗をかいたりする場合もあるでしょう。
ただし、これらの症状は疲労や睡眠不足による症状と区別がつきにくく、多くの方が血糖値の問題だと気づきません。食後は消化のために副交感神経が優位になり、健康な人でも眠気を感じるのは自然なことです。
しかし、食事内容や食べ方を変えることで症状が改善する場合は、血糖値スパイクが関係している可能性があります。症状の変化を注意深く観察し、気になる場合は医療機関で相談することをおすすめします。
血糖値スパイクが起こるメカニズム
血糖値を調整するインスリンというホルモンの働きに問題があることが根本的な原因です。
インスリンは膵臓(すいぞう)という臓器から分泌され、血液中の糖分を細胞に取り込む重要な役割を担っています。
年齢とともに膵臓の機能が衰えたり、肥満や運動不足によってインスリンの効きが悪くなると、適切なタイミングで必要な量が分泌されなくなります。
その結果、食事で摂取した糖分が血液中に留まり、血糖値が急激に上昇してしまうのです。
体は慌てて大量のインスリンを分泌して血糖値を下げようとしますが、今度は過剰に反応して血糖値が急降下します。
このジェットコースターのような血糖値の乱高下(血糖値スパイク)が血管にダメージを与え、動脈硬化や様々な合併症のリスクを高めることになります。
糖尿病を放置してはいけない理由
糖尿病は初期症状がほとんどないため軽く考えられがちですが、放置すると深刻な健康被害をもたらします。
糖尿病は自覚症状がなくても、見えないところで合併症が進行しており、気がついた時には合併症のため、日常生活に支障があらわれていることが少なくないのが特徴です。
なぜ早期の治療が必要なのか、その理由を詳しく解説します。
糖尿病には三大合併症がある
糖尿病の最も恐ろしい点は、放置することで「三大合併症」と呼ばれる深刻な障害を引き起こすことです。
糖尿病特有の三大合併症は、発症して進行すると生活の質が著しく低下します。
- 糖尿病性神経障害
手足のしびれや痛みから始まり、重症化すると、足が腐ってしまい切断を余儀なくされる方もおり、日本では年間約3,000人の患者様が足の切断をしているという現実がある。 - 糖尿病網膜症
日本における失明の3番目に多い原因となっています。 - 糖尿病性腎症
毎年、約16,000人の方が新たに人工透析を始めている状況。
これらの合併症は一度進行すると元に戻すことが非常に困難なため、早期の血糖管理によって予防することが何より重要になります。
発見が遅れがちな初期症状
糖尿病の最大の問題は、病気が静かに進行することです。
糖尿病の初期は、痛みもかゆみも起きないため、自力で気づくことができないという特徴があります。
そのため、早期発見するには、健診などで定期的に検査を受けてチェックすることが重要とされています。
症状が現れるのは病気が進行してからで、以下の自覚症状が現れます。
- 喉が渇く
- 体重が減る
- 水をよく飲む
- 疲れやすくなる
- 尿の回数が増える



ところが、これらの症状が出るころには、すでに病気が進行していることが多いのです。
この「サイレントキラー」とも呼ばれる特性こそが、糖尿病を早期発見・早期治療しなければならない最大の理由なのです。
隠れ糖尿病・血糖値スパイクを防ぐ生活改善法
血糖値スパイクやかくれ糖尿病を予防するには、日常生活の見直しが不可欠です。
食事の工夫、運動習慣の確立、ストレス管理が三大要素となります。
特に職場での対策も重要になってきており、個人だけでなく職場全体での取り組みが効果的です。
健康的な食事習慣
血糖値スパイクや隠れ糖尿病を防ぐ最も重要な対策が食事習慣の改善です。
食事の回数、食べ方、食べる順番、食材選びなど、毎日の食事を少し工夫するだけで血糖値の安定につながります。
ここでは薬剤師の視点から、血糖値をコントロールするための具体的な食事のポイントをご紹介します。
食事を抜かない
食事を抜くことは血糖値スパイクを引き起こす最大の要因の一つです。
なぜなら、食事を抜いた後の次の食後は、血糖値が急上昇しやすくなってしまいます。



また、食事回数を減らすと、食事から取り込まれる糖が吸収されやすくなり、血液中のブドウ糖が急激に増える原因となることも分かっています。
忙しい毎日でも3食規則正しく食べることで、血糖値の安定を保つことができます。
早食いは避け、食事時間は20分以上かけて食べる
ゆっくりとした食事は血糖値スパイクを防ぐ基本中の基本です。
なぜなら、早食いをすると一気に大量の糖質が体内に入り込み、血糖値が急激に上昇してしまいます。
- 早食いを避ける
よく噛んで、ゆっくり食べる習慣をつける - 噛む回数を意識する
自然と満腹感が得られ、食べすぎ防止にも◎ - 食べる順番を工夫する
野菜 、汁物→ タンパク質 → 炭水化物の順番で
血糖値の上昇が緩やかになる
よく噛むためにも野菜を固めに茹でたり、大きめにカットして調理することもおすすめです。
主食(炭水化物)は一人前を目安にする
炭水化物の摂取量をコントロールすることは血糖値管理の要です。
1回に食べる糖質摂取量が多くなると、血糖値は急上昇しやすくなってしまいます。



食べる順番と併せて、糖質摂取量を抑えるようにしましょう!
理想的なのは昔から言われる一汁三菜(主食となるご飯に、汁物、主菜と副菜2品)をイメージした食事です。
炭水化物の重ね食いを避ける(ラーメンとチャーハンなどはNG)ことも大切で、麺類と丼物の組み合わせなどは控えるべきです。
果物についても適量であれば問題なく、一日100g~200g程度(みかんなら2個)が推奨されています。
菓子類などの間食はできるだけ控える
間食の選択は血糖値に大きな影響を与えます。
甘い菓子類以外にも、糖質量の多いせんべい類を空腹時に食べると、血糖値は急上昇してしまいます。



間食で摂る糖質の目安は20g以内とし、栄養成分表示を確認する習慣をつけましょう!
どうしても間食を摂りたい場合は、アーモンドやクルミなどの素焼きナッツは、血糖値に影響が少ないため、間食としてもお勧めです。
また、70%以上のハイカカオチョコレートも血糖値の上昇を緩やかにする効果がありますが、カロリーが高いため個包装のものを1~3枚程度に抑えることが大切です。
間食の量と質を意識することで、血糖値への悪影響を最小限に抑えることができます。
甘い飲み物は避け、カロリーのないもので水分補給
飲み物は血糖値に最も即座に影響を与える要因の一つです。
糖質の多く含まれる甘い飲料は、吸収が非常に早く、短い時間に多くの糖質を摂ってしまうことで、血糖値が急上昇します。
100%の果汁や栄養ドリンクも一見、身体に良さそうなイメージですが、栄養成分表示を確認すると、1本当たり糖質量が20g程度含まれているものも少なくありません。
水分補給は原則カロリーのないもので行い、水やお茶を選ぶようにしましょう。



甘い飲み物に慣れている方は、徐々に薄味にしていくか、人工甘味料を使用した低カロリー飲料に切り替えることから始めてみてください!
血糖値スパイクを起こしにくい食べ物
血糖値の上昇を抑える食品を積極的に取り入れることも、重要な対策の一つです。
① ベジタブルファースト(食物繊維を先に)
以下の食材を食事の最初に食べると、糖の吸収がゆるやかになります
- 野菜(特に葉物・根菜以外)
- 海藻類(わかめ・ひじきなど)
- キノコ類(しいたけ、しめじ、エリンギなど)
② 食前ナッツで血糖値の急上昇を防ぐ
食事の10分前に素焼きナッツをひとつまみ。
これにより、糖の吸収が穏やかになりやすいとされています。
※無塩・無糖のナッツを選ぶことがポイント!
③ ホエイプロテインを含む乳製品
ヨーグルトや牛乳に含まれるホエイプロテインも、血糖値の上昇を抑える効果があります。
ただし、選び方には注意が必要です!
- ヨーグルト: 無糖・低脂肪または無脂肪タイプを選ぶ
- 牛乳: 低脂肪乳または無脂肪乳がおすすめ
④ ネバネバ食品で糖の吸収を遅らせる
粘り気のある食品は、腸内での糖の吸収をゆるやかにしてくれます。
- オクラ
- 納豆
- 山芋(とろろ)



こうした食材を日常的に取り入れることで、血糖値スパイクの予防や改善に役立ちます。
運動習慣と体重管理
運動も血糖値を下げる最も効果的な方法の一つです。
食事で摂取した糖分を筋肉でエネルギーとして消費することで、血糖値の急上昇を抑えることができます。
また、継続的な運動は筋肉量を増やし、インスリンの働きを改善する効果もあります。



ここでは、血糖値改善に効果的な運動法と、忙しい日常でも実践できる対策をご紹介します!
血糖値改善に効果的な運動
運動は血糖値を下げる最も効果的な方法の一つです。
運動には、体を動かすためのエネルギーとして細胞内のブドウ糖を消費して血糖値を下げる効果があることが分かっています。
特に食後のタイミングが重要で、血糖値は食後30分から1時間頃にピークを迎えるため、このタイミングで身体を動かしていくと、食後の血糖値の上昇がゆるやかになり、血糖値スパイクを和らげることができるとされています。
おすすめは20分程度の早歩きなどの有酸素運動です。
食後1~2時間後に運動を行なうと食後の血糖値や中性脂肪の値の上昇をゆるやかにすることができます。
その際は激しい運動ではなく、階段の上り下りやウォーキング程度で大丈夫です。
筋力トレーニングも効果的で、特にランニングなどの有酸素運動と筋力トレーニングは、身体の筋肉に負荷がかかるだけでなくインスリンの効果を助ける効果があります。
職場でできる簡単な対策
職場での血糖値対策は個人だけでなく環境整備も重要です。
まず、ランチの取り方に工夫が必要です。
炭水化物に偏った食事は避け、ご飯や麺の大盛りを避けて、野菜とたんぱく質の揃っているバランスのよい食事を摂るようにしましょう。
血糖値スパイクを起こすと眠気や頭痛など、仕事に支障を感じる症状が起こることがあります。
この場合は、
過剰にならない程度のカフェイン(コーヒー・緑茶などの飲料)を取る
冷たい飲料を飲む
ストレッチなどで身体を動かす
可能であれば15分程度の仮眠をとる
など、リフレッシュを図ることが推奨されています。
職場環境の改善として、菓子などのお土産を配らないルールを作ったり、甘い飲料の自動販売機を置かない、または低糖質のものに限定するなど、職員への健康配慮も必要です。
仕出し弁当がある場合は、ヘルシー弁当を準備したり、ご飯の量を調整できるような配慮も効果的です。
ストレスと血糖値の関係
ストレスは血糖値に直接的な悪影響を与える重要な要因です。
血糖値を上げるホルモン(グルカゴン、コルチゾール、アドレナリンなど)は、ストレスによって分泌が高まり、逆に血糖値を下げるホルモンの働きが悪くなるため、悪循環をきたすことが知られています。
血糖値を下げるホルモンは、インスリンの1種類だけですが、上げるホルモンは多く存在するため、ストレスコントロールは非常に重要なポイントとなります。



また、強い怒りやストレスも血糖値スパイクを招くことが分かっています。
さらに問題なのは、過度なストレスにより飲み過ぎや食べ過ぎをしてしまうことで、「ストレスを食べることで発散する」と血糖値への悪影響があることは言うまでもありません。
睡眠と血糖値の関係
質の良い睡眠は血糖値管理に欠かせない要素です。
睡眠時間には個人差がありますが、心身の疲れを解消するために、6~8時間は必要と言われているとされています。
睡眠不足が続くと様々な悪影響が生じ、過度の寝不足が続くと、食欲を増すホルモン(グレリン)が上昇し、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の働きが低下することが分かっています。
また、睡眠不足になると血糖値の上昇を抑えるホルモンの働きが低下し、血糖値が上がりやすい状態になるため注意が必要です。
起きている時間が長くなると、空腹を感じる時間や食べる機会が増えるため、血糖値のコントロールには適さない環境となってしまいます。



できるだけ早めの就寝を心がけ、連続して寝不足にならないよう、スケジュールをコントロールすることが大切ですね!
まとめ
今回の記事では、以下の点を説明しました。
隠れ糖尿病について
血糖値スパイクについて
糖尿病が放置するとどうなるか
血糖値スパイクを防ぐ予防法について
健康診断では発見しにくい「隠れ糖尿病」や「血糖値スパイク」を予防するには、日常生活の見直しが欠かせません。



食事、運動、ストレス対処、睡眠は血糖コントロールにおいてどれも重要な要素ですよ!
これらの対策を継続することで、糖尿病への進行を防ぎ、健康な生活を維持できます。