こんな悩みを解決できる記事を用意しました!
糖尿病の方にとって、体調を崩す「シックデイ」は特別な注意が必要な日です。
いつも通り薬を飲んでいいのか、食事が摂れないときはどうするのか。
本記事では、シックデイ対応の基本を、わかりやすくまとめました。
薬の種類ごとの対応や、食事・水分のポイントまで、薬剤師の視点で丁寧に解説します。

シックデイ(体調が悪い時)とは
糖尿病のある方が、風邪をひいたり、熱が出たり、おなかをこわしたりして体調をくずしたとき、
「食欲がない」「ごはんが食べられない」といった状態になることがあります。

なんで特別な注意が必要なの?
体調を崩すと、血糖値がいつもより高くなったり、食事がとれずに低血糖になったりすることがあります。



普段は血糖値が安定していても、体調次第で急に乱れることがあります。
急な合併症(ケトアシドーシスなど)を防ぐためにも、早めの対応が大切なんですよ。
シックデイ時の糖尿病薬の適切な使い方
糖尿病のお薬には、いろいろな種類があります。
そして、体調が悪いときの対応は、薬の種類によって変わってきます。
まずは、自分が飲んでいるお薬の名前やタイプをしっかり把握しておきましょう。



まずは、自分が飲んでいるお薬の名前やタイプをしっかり把握しておきましょう!
それが、体調不良のときに慌てないための第一歩になります。
体調が悪いときは、
- 血糖値や尿糖をいつもよりこまめにチェックすること
- 血糖値が高い状態が続くときは、早めに病院を受診すること
これがとても大切です。
「ちょっと様子を見よう…」と放っておかず、早めに相談してくださいね。
以下の表はあくまで「目安」としてご覧ください。
実際にシックデイ時はどうしたらいいかは、必ず主治医の先生の指示に従ってくださいね。
経口血糖降下薬のシックデイ時の対応
薬効分類名 | シックデイ時の対応 |
---|---|
スルホニルウレア(SU薬) 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) アマリール(グリメピリド)・グリミクロン(グリクラジド) シュアポスト(レパグリニド)等 | 食事摂取不良であれば、減量または中止が必要。 目安: ・食事量2/3以上 → 通常量 ・食事量1/3~2/3 → 半量 ・食事量1/3以下 → 中止 |
GLP-1受容体作動薬 オゼンピック・リベルサス・トルリシティ・マンジャロ等 | 血糖値を確認しながら、必要に応じてインスリンへの切り替えを含めて調整。 |
DPP-4阻害薬 エクア・ジャヌビア・トラゼンタ・テネリア等 | コンセンサスはないが、食事量が2/3未満で中止とすることが多い。 |
グリミン系薬 | 明確な指針はないが、中止が望ましいと考えられる。 |
ビグアナイド薬(BG薬) メトグルコ(メトホルミン) | 中止が必要。 普段からシックデイ時の中止を指導。 受診時には薬の変更も検討。 |
チアゾリジン薬 アクトス(ピオグリタゾン) | 中止が可能。 ただし、食事量が2/3以上なら継続することもある。 |
α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI) ベイスン(ボグリボース)、セイブル(ミグリトール)、グルコバイ(アカルボース) | 中止が可能。 特に消化器症状が強いときは中止を推奨。 |
SGLT2阻害薬 フォシーガ、カナグル、ジャディアンス、スーグラ等 | 中止が必要。 普段からシックデイ時の中止を指導しておく。 |
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf
3)m3.com>薬剤師コラム・特集>糖尿病の豆知識>【糖尿病】糖尿病患者のシックデイに服薬指導するには
インスリンのシックデイ時の対応
インスリンの種類 | 対応方法 |
---|---|
中間型または持効型 | 原則継続 |
速効型および超速効型 | 食事量に応じて調整: ・食事量100~80% → 全量 ・80~50% → 2/3量 ・50%以下 → 1/2~中止 ・10%以下 → 中止 |
2)糖尿病診療ガイドライン2024 Q20-8
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf
3)m3.com>薬剤師コラム・特集>糖尿病の豆知識>【糖尿病】糖尿病患者のシックデイに服薬指導するには
補足:
- 自己血糖測定は3~4時間おきに行う。
- 血糖値が200mg/dLを超え、さらに上昇傾向がある場合は、その都度2~4単位追加投与を検討。
シックデイで血糖コントロールが困難になる理由
それではなぜ、体調が悪い時(シックデイ)で血糖コントロールが困難になるのでしょうか。
僕たちは体調を崩すと、体はストレスを感じて特別なホルモンを分泌します。
このホルモン(カテコールアミンやコルチゾールなど)は血糖値を上げる働きがあり、インスリンの効きを悪くしてしまいます。



そのため、風邪や発熱などで食事があまり食べられない時でも、血糖値が普段より高くなりやすくなります。
悪循環に注意が必要
血糖値が上がると体の水分が失われやすくなり、脱水状態になります。
脱水になると今度はさらに血糖値が上がってしまうという悪い循環が始まってしまいます。
薬との関係も複雑
糖尿病のお薬の中には、 副作用で下痢や腹痛などのお腹の症状をひどくしてしまうものや、おしっこの量を増やして脱水を起こしやすくするものがあります。
食事がきちんと食べられない状況で、いつも通りにお薬を飲むと、今度は低血糖を起こしてしまう可能性もあります。
このように体調不良の時は、血糖値の管理が複雑になるため、事前に主治医の先生と対策を相談しておくことが大切です。



主治医の先生と「体調が悪くて食事量が少ない時はどうすればいいか」必ず確認しましょう!
シックデイの対応
シックデイ時の対策は以下の通りです。
- 最低限の糖質は接種する
- なぜ糖質は重要なのか?食事量が減っていたら主治医に報告を!
順番に詳しく説明しますね!
シックデイ時の食事について
食欲がないときでも、少しずつ糖質をとるようにしよう
体調がすぐれないと、どうしても食欲が落ちてしまうことがありますよね。
でも、そんなときこそ気をつけたいのが「糖質(炭水化物)」の摂取です。



糖質が不足すると、低血糖になりやすくなってしまいます。
特に薬を使っている場合は注意が必要ですよ。
食欲がないときは、無理にいつも通りの食事をとらなくても大丈夫です。
お粥やうどん、雑炊、果物、アイスクリームなど、口当たりがよくて消化にいいものを選んでみてください。
一度に食べられなくても、少しずつ何回かに分けて食べればOKです。
1日の目安としては、糖質を100~200gほどとれると安心です。
とにかく「まったく食べない」という状況を避けることが、体調管理の第一歩になります。
- 白米(150g茶碗に軽く一杯):55g(252kcal)
- おかゆ(200g茶碗一杯):31g(140kcal)
- うどん1玉(220g):46g(231kcal)
- イチゴ(5個・75g):5.3g
- バナナ(1本・100g):21.4g
- リンゴ(1個:250g):35.3g
- アイス(スーパーカップバニラ1個・200ml):35.3g
なぜ糖質摂取が必要なのか?
食欲がないときも、最低限の糖質はとるようにしましょう!
人が動いたり考えたりするためには、「エネルギー」が必要です。
そのエネルギーのもとになるのが、体の中で行われている「糖の代謝(とうのたいしゃ)」です。
普段は、血液中の糖(ブドウ糖)をインスリンというホルモンがうまく細胞の中に運んで、そこで燃やしてエネルギーにしています。
でも、糖質が足りなかったり、インスリンの働きがうまくいかなかったりすると、糖ではなく脂肪を使ってエネルギーを作るようになります。
このとき、体の中では「ケトン体(けとんたい)」という物質が作られます。
ケトン体がたまりすぎると、血液が酸性に傾いてしまい、「ケトアシドーシス」という危険な状態になります。
ケトアシドーシスになると、吐き気や食欲不振、重い場合には意識がもうろうとすることもあります。
こうした状態を防ぐためにも、食欲がなくても最低限の糖質はとるようにしましょう。
たとえば、おかゆ、うどん、果物、ジュースなど、少しずつでも口にすることが大切です。
シックデイ時の水分摂取について
脱水を防ぐために、こまめに水分をとりましょう。
体調が悪いと、気づかないうちに脱水になりやすくなります。
のどが渇いていなくても、意識して水分をとることが大切です。
食欲がないときは、水よりもポカリスエットやジュースなど、糖分を含む飲みものの方が飲みやすいかもしれません。
ただし、一気にたくさん飲むと高血糖になる可能性があるので、少しずつにしましょう。
一度に大量に水を飲むと心臓に負担がかかることもあるので、「ちょこちょこ飲む」を意識してみてくださいね。
また、水分だけでなく塩分(ミネラル)も一緒にとることが大切です。
たとえば、経口補水液や、お味噌汁・漬物・梅干しなどをうまく活用してみてください。



もちろん、塩分のとりすぎは高血圧の原因になるから注意が必要です!
よくある間違った対応の事例
糖尿病の患者さんでシックデイ時の対応を間違えると、命にかかわることもあります。
体調が悪くても、「そのうち良くなるかも」と思って、つい様子を見てしまうことってありますよね。
でも、糖尿病がある場合は、それが命に関わる危険な判断になることもあるんです。
たとえば…
- 熱があるのに、水分をしっかりとれずに放置してしまい、脱水になってしまう
- 「食べてないからインスリンは全部中止でいいや」と判断して、危険な高血糖になってしまう
- しんどさを我慢し続けて、意識がもうろうとしてから救急搬送される
こうしたことが重なると、命にかかわる状態になることもあります。
だからこそ、日ごろから「正しい対応を知っておくこと」がとても大切です。
糖尿病薬の副作用に備えるために大切なこと
血糖を下げる薬には、メリットとリスクの両面があります。
糖尿病のお薬は、血糖値を下げる効果が高く、血糖コントロールにとても役立つお薬です。
でもその反面、低血糖などの副作用が出ることもあるため、注意が必要です。



このリスクは、糖尿病の治療で薬を使っている方なら、誰にでも起こりうることです。
薬の副作用が心配なとき、または体に何か変だな?と感じたときには、自己判断をせず、早めに医師や薬剤師に相談することが大切です。
以下、副作用に備えるために大切なことをまとめました。
体をしっかり休める
まずは落ち着いて、安静にしましょう。
糖尿病のお薬を使ったあとに、「なんだか体調がいつもと違うな…」と感じたら、
まずは無理をせず、ゆっくり安静にしてください。



体調が悪いときに焦って動くと、正しい判断ができなくなり、症状がかえって悪くなることがあります。
安静にして少し様子を見て、落ち着いてきたらそのまま休んで大丈夫です。
もし、ふらつきや冷や汗など、低血糖のサインが出ている場合は、すぐにブドウ糖やジュースなどで対処してください。
それ以外の異変(強い吐き気や動悸など)があるときは、自己判断せず、すぐに病院へ相談しましょう。
医師の指示を仰いで、安全に対応することがとても大切です。
すぐに使えるブドウ糖を準備
いつも「ブドウ糖」を持ち歩きましょう!
糖尿病の薬を使っていると、副作用として「低血糖」が起こることがあります。
低血糖になると、ふらつき・ドキドキ・冷や汗などの症状が出ることがあります。
軽い症状なら自然におさまることもありますが、放っておくと悪化することもあるので、早めに対処することが大切です。
いちばん効果的な対処法は、「ブドウ糖」をとることです。
糖尿病の治療中の方は、外出時や職場、旅行先などでもすぐ使えるように、ブドウ糖や糖分のあるお菓子(飴やラムネなど)をいつも持ち歩くようにしましょう。



もし手元にない場合は、自動販売機で清涼飲料水を買うのもOKです!
※「カロリーゼロ」や「糖質ゼロ」は避けて、普通のジュースやスポーツドリンクを選んでくださいね。
ペットボトル半分~1本で、必要な糖分を補えます。
周囲に体調のことを共有しておく
糖尿病のお薬による低血糖を何度も経験すると、血糖値が下がっても体が慣れてしまい、いつものような症状を感じにくくなることがあります。
そうなると、気づかないうちに低血糖が進んで、ぼーっとしたり意識がもうろうとしたりすることもあるかもしれません。



もし意識を失ってしまったら、自分ではどうすることもできなくなり、とても危険な状態になってしまいます。
普段からご家族や職場の方に、「低血糖で意識を失うことがあるかもしれない」と伝えておきましょう。
そのときの対応方法も、あらかじめ一緒に確認しておくことをおすすめします。
たとえ、風邪くらいの症状でも「体調が悪い」と報告することは大事なことです。
薬を勝手に減らすのは危険
お薬の量を自分で調整するのはとても危険です
糖尿病のお薬で副作用がつらいと感じても、ご自分でお薬の量を減らすのは大変危険なことです。
主治医の先生は、あなたの体の状態をしっかりと診察した上で、今のあなたに最も適したお薬の種類と量を決めて処方しています。
確かにお薬の量を減らせば副作用が起こりにくくなりますが、それと同時にお薬の効き目も弱くなってしまいます。
効果が弱くなるということは、血糖値をうまくコントロールできなくなるということなのです。
血糖値のコントロールが悪くなると、糖尿病の症状が悪化してしまう可能性があります。
ですから、お薬の量を自己判断で変更することは絶対に避けてください。
※体調を崩した時(シックデイ)の対応について、必ず主治医の先生に確認しておきましょう。
Q&A
まとめ
糖尿病と薬、食事量をシックデイ時をメインでお話しました。
おさらいです。
体調を崩したとき(=シックデイ)は、ふだんとは体の状態が違ってきます。
熱が出たり、食欲がなくなったり、吐いたりすると、血糖コントロールがとても不安定になります。
そんなときに大切なのは、
- 薬を自己判断で止めないこと
- 少しでもいいから糖分・水分をとること



「ちょっとしんどいけど、様子を見ようかな…」が一番危ないこともあります。
自分で抱えこまず、迷ったら早めに医療機関へ相談してくださいね。